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 僕の前に出てきた勇太君は、あまり外に出ていないようなので、色が白い。


「こんばんは」


 僕が挨拶しても返事がない。


「勇太、先生にご挨拶しなさい!」


 裕香子がそう言ったが、僕が、


「お母さん、子供さんだって人と会いたくない時期も、話したくない時期もあるんですよ」


 と念を押し、勇太君の方を振り向いて、


「今日は一緒に征西大の過去問を解いてみよう」


 と言い、玄関で靴を脱いで、家へと上がる。


「先生、お手数掛けます」


 裕香子が一礼し、キッチンへと歩き出した。


 これから飲み物を作るのだろう。