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 互いにコーヒーを飲み終わって、僕たちは洗面まで済ませ、狭いマンション内で今日どうするか話し合っていた。


 ドイツ語学科の上原研究室は空いているし、多分僕たちが行けば、誰か研究員がいるだろうと思う。


 僕たちの講義は何も上原先生や綾邊など、教授や客員教授などの肩書きの付いた人間ばかりじゃない。


 講師や助教、助手もいるし、常にいろんな人たちと接しながら研究を続けている。


 特に院試を受ける場合は、過去問をきちんと解いておかないといけない。


 僕も慧子も過去十年分ぐらいの英語の問題と小論文問題の二種類を解くつもりでいた。


 傾向と対策を練るのが、入試の王道だからである。


 それに僕自身、ドイツの文学作品はたくさん読んでいたが、肝心の何を専攻とするかは決めていなかった。


 一応『ファウスト』の作者であるゲーテを研究したいとは思っている。


 ゲーテの著作は大方読んでいた。