「そう?俺は少し疲れ気味だったけど」


「それは栄司が頑張りすぎたからよ。少し気を抜いてぐらいがちょうどいいんじゃない?」


「そうだね。俺も少し気持ちを楽に持つから」


 僕は確かに処方された自律神経を調整する薬が着実に効き始めているのを感じる。


 気持ちが和んでいた。


 ピリピリした状態も必要なのだが、あまり過剰すぎると、疲れてしまう。


 僕もこの季節はなるだけゆっくり過ごしたかった。


 何かと気ぜわしい季節だからである。


「慧子」


「何?」


「夜も眠れないぐらい、会いたいときってある?」


「あるわよ。あたしだって人間だし」


「俺もそんな夜が重なることがあったんだ。君と出会ってからずっと」