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 コーヒーのお替りを頼んだ僕が、文庫本に目を落としていると、店員が飲み物を届けてくれた。


「ああ、ありがとう」


「どうぞごゆっくり」


 カフェでお茶を飲みながら会話出来ることほど、幸福なものはない。


 僕は普段、研究室でパソコンのキーばかり叩き続けているので、疲れるのだった。


 それに慧子も風邪が治った後で、脇から見て疲労が窺(うかが)える。


 僕たちは互いにコーヒーを飲みながら寛ぎ続けた。


 何と言うことなしに夕方までいて、僕はホットコーヒーをカップに丸々三杯飲んでいたのだ。


 そして開いていた文庫本に栞(しおり)を挟んで閉じ、


「そろそろ出よう」


 と彼女に言う。