僕が二階の勇太君の部屋に入っていくと、教科書は平積みされ、ほとんど勉強らしい勉強をした形跡がない。


 僕は別に無理やり勇太君を勉強させようとは思わなかった。


 むしろ本人の意思を尊重し、興味があることに意識を向けようと考えている。


 だから勉強の合間でもバンドの話など、彼が興味を抱くものを引き出そうと思っていた。


 僕も音楽は洋楽・邦楽を問わず、いろいろと聴くのだが、正直なところロックはあまり聴かない。


 勇太君はギター担当で、ボーカルやベーシスト、ドラマーなどは別にいた。


 いろんな場所で活動しているらしい。


 確かにその手の世界に関しては知らないことが多かったが……。


 僕はその日、征西大の過去問を一緒に解きながら、同時に彼から音楽の話も聞いた。


 そしてそういった話を聞きながら、


“やっぱしこの子は進学に向いてない”


 と思うようになる。