だから焦ってるんだよ。


「ふ〜ん。
てか、一緒に暮らしてて何もないん?」


「なんもて?」



雑誌の重要項目に赤ペンで線をひいていきながら、皐月に問う。


「そりゃあ、男と女が毎日二人やで。
あるこというたら、一つしかないやん?」



男と女に、あること?


二人で?



…………ボンッ!



「顔…真っ赤やし」


「なっななな、何を言うのさっ!」


「変な言葉やなぁ」


「うう………」



皐月って、たまにとんでも恥ずかしいことを言ってくる。


熱くなった頬を、雑誌を使いパタパタと仰いでいると、下から覗き込まれる。



「んで、ホンマのとこどうなんかなぁ〜?」


みなさ〜ん、此処に変態親父がいますよー。



「……なんもないよ」


正直に答えてしまうあたしもあたしだ。


だけど、本当に何もない。


「ホンマに?」


「ないよ?」


「キスも?」


「んなん、あるわけないやんっ!」


キスなんてとんでもない。

手を繋ぐのだって勇気がいるんだから。