「欄って、呼んでやぁ?」

歩き出したまま、隣を歩く千尋を見上げた。


千尋の腕に、勇気を出して自分の腕を絡める。


あたしね、もう少し素直になろうと思うの。


恥ずかしいけど、千尋だけは逃がしたくないから。



「それは、命令?」


真顔で見下ろしてくる千尋に、あたしは一瞬戸惑ったけど。


「千尋の意思で、決めてほしい…」



こればかりは、ご主人様とメイドって関係でやりたくない。


千尋の意思で、欄って名前を呼んでほしいの。



もっと、粘っていれば、いつか必ず想いは通じると思う。



もっと、もっと。


粘って、粘って。


















「寒いから、早よう帰ろか。

欄」




ほら、粘ったかいがあったよ。