「……此処だ」
着いたよ。
千尋の会社。
ビルを見上げて息を吐いたら、白い息が出た。
剥き出しの手は、赤くなってもう感覚なんてない。
「閉まってる…」
だよね。
開いているわけない。
分かってたじゃん。
何を期待していたんだろう。
漫画やドラマじゃあるまいし、此処で千尋に会えるなんて。
クリスマスが終わる少し前に、大好きな人に会える。
そんな運命のようなこと、普通の人生では起り得ないでしょ。
馬鹿だなぁ。
ほんと………。
クルンと会社に背を向けて、冷えきった手に息をふきかける。
「また…明日くるか…」
今日は無理だったけど、明日ならいるだろう。
仕事あるけど、休んじゃえ!
早く会いたいんだもん。
仕事に邪魔はさせないぜ!



