「まぁな。 でも、今日かてラブラブする予定やった!」


「予定は、あくまで予定なのです」


「意味わからんこと言いなっ!?」



居酒屋“げんこつ”何とも痛そうな、行き着けの店は今日は満席。


行き着けで、顔を知られていたあたしたちは大将に優先的に入れてもらえた。



「なんや、欄ちゃん荒れてるな?
男に振られたかっ!?」


「女将さん、それ禁句やわっ!!」


「え!? ほんまになん?」


慌てて女将さんを制止された皐月は、苦笑いを浮かべていた。


「別に気回さんといてぇ。振られるまえに、終わっただけやから……」


「ら〜ん……」


「よし! ほな今日はサービスでビール一杯つけたろ!」


「えー、全部タダちゃうの?」


「んなこと出来るか!」



皆、気を使ってくれる。


ここに来たら、明るい雰囲気に呑まれて少しは楽になるかと思った。



「女将さん、お客さん呼んでんで?」


「あ、はいは〜い!」


賑わう店のカウンターで、出されたビールをグビグビ飲みほす。


でも、なかなか酔えない。