千尋は怒ってるかと思ったら、唇を尖らせて拗ねた仕草を見せた。


「…ごめん。熱ぅなりすぎたわ」


しゃがみ込み、荷物を集めると首に手を当ててうなだれる。


「…ありがとう」


「いや、礼言われるようなことはしてへんから」


「ううん。ありがとう」



千尋は、そんなことしてないって言うけど。

あたしは、救われた。


あのままだと、あたしは泣いて崩れて惨めになるだけで。
でも、千尋が先輩を怒ってくれたから。


あたしの気持ちは、また軽くなった。


辛かったし、傷つけられたけど。
それ以上に、千尋があたしを支えてくれた。



千尋がかばってくれたことが、嬉しかった。



欄……と、名前を呼んで周りを気にせず飛び交ったことが死ぬほど嬉しかった。





「ほなぁ、帰ろうか。欄さん」



嬉しかったんだ。


だからこそ、またさんづけになった時、あたしは深く落ち込んだ。



でも、いいよ。


今は、かばってくれた事実があるから、あたしは頑張れる。



まだ、頑張れるよ……。