千尋、もういいよ。


「女が男に尽くすもんやろ。
お前は、男のプライドがないんか?」


「お前は王様か!?
お互い大事やったらな、お互いが尽せばええやろが。
プライドなんかで、女泣かせるくらいなら、俺はプライドなんか捨てたるわっ!」



「…もっ…いいから!」



殴りかかりそうな千尋の腕に、無我夢中でしがみついた。


もう、いいよ。


千尋、いいの。



「…さっさと、離せガキが」


「おまっ……欄?」


「千尋、いこっ!あっち、行こう!?」



もう、いますぐ先輩から離れたかった。


だから、千尋を引っ張って制止を促した。


千尋の力が緩んだのか、先輩は舌打ちをして、あっさりといなくなった。


もっと、早くいなくなれば良かったのにと思いながら千尋から手を離す。



行き交う人々が、何事だ?と集まっていたけど、先輩がいなくなってから、チラホラと解散した。



残されたのは、あたしと千尋と地面に投げ出された荷物だけ。



「…も、家帰る」


荷物を拾おうとする手を、千尋に止められる。