足が地面に凍りついて、一歩も前に出なかった。


「つい5日ほど前までは、健気なええ女やと思ってたけど。

知らんかったわ、欄は男を奴隷のように扱うんやな?」



奴隷?


奴隷って、なに?


ゆっくり先輩を振り返る。

何を言われるか怖くて、千尋の手を強く握りしめてしまう。





「男に荷物持たせたり、デカイ態度とったり。

確か、欄は料理できんかったのに最近はお弁当作ってきてたなぁ。
あれは、その奴隷君に作ってもらったんか?」


「……っ…」



酷いっ。


酷いよ、先輩。


あたしが、先輩に何をしたの?


何で、ほっといてくれたらいいのに何で蒸し返すような事を言うのよっ!



-ガタンッ!


「荷物持ったるんが、弁当作ったるんが、何が悪いんじゃっ!?」


荷物を投げ出し、あたしが崩れ落ちると同時に千尋は先輩の胸ぐらを掴みに行った。


普段温厚な千尋からは、想像もつかないような汚い言葉を並べていて。



「男ならな、重いもん女に持たすなっ!
料理もできるほうがやったらええんじゃっ!

女を使い捨てみたいに扱うお前より、俺は尽くしたるほうを選ぶわ、ボケっが!」