どうして、千尋は辛そうな顔をするんだろうとか。


あたしに、そんなことを言うんだろうとか。


色々聞きたいことはあるのに、千尋を見ていると何も聞けなくなった。



「そいつとの事は、なかったことには出来んけど。

次に恋した時は、自分を大事にしたってや?」


「なんで、そんなこと言うん?」



大事にしろとか、そんなこと。


どうして、たかが一週間仕事としているだけのあたしに、言ってくれるの?



千尋の答えが聞きたくて、あたしはひたすら待った。


一瞬開かれた瞳を、スーッと細めて目尻に皺を寄せて微笑みを浮かべた千尋は、その表情に似合う優しい声色で言う。
















「なんか、欄さんほっとけんから……。

好きな子には、幸せになってほしいやん」



次に恋をするなら、自分を大切にしろ。


千尋はそう言ったよね。


だったらさ、次に好きになるなら、あたしを大切にしてくれる人がいいと思ったよ。



ねぇ、千尋。


あなたは、誰か大切にしたい人はいますか?