恋の相手はメイド君!?

セックスをしなければ、今もまだ先輩といたかもしれない。


「欄さん、聞いてもええかな?」


ずっと頭を撫でていてくれた千尋は、あたしの涙を掬いながら遠慮がちに聞いてくる。


声を出せば、泣き言しか出てきそうもないから、あたしは小さく頷いた。



「……欄さんと初めて会った日な、欄さんずっと泣きながらいいよった。

『ごめんなさい』って。
あれは、彼氏に言うてたん?」


あたし、そんなこと言ってたんだ。


「…彼氏…やないよ」


不思議だ。


あたしは、たった2日一緒に過ごしているだけの千尋に、先輩との事を言ってもいいと思ってしまう。



「彼氏…やったんかもわからへんの。
ずっと片想いやって……告白したら『いいよ』って」


今思えば、あれは何に対してのいいよだったのかな。

ちょっと冷静を取り戻しかけている頭で考えながら、あたしは千尋に話していく。



「三回目のデートの帰りに、まだ早いかもって思ってたんやけど……。

先輩が好きやったし、断るんは変かなって思って、ホテル行った」



付き合っている以上、遅かれ早かれセックスはする。

恋人なんだから。