駄目だ。


千尋にこれ以上、近づいては危険だ。



「早よ、おいで?
綺麗にしたるよ、ご主人様」


狭い室内に妖しく響く低い声。


身体の奥にズンと響く声に、あたしは戸惑いながらも千尋に手を伸ばしてしまう。



千尋の表情が。


千尋の声が。


千尋の雰囲気が。



あたしを、惑わしていく。



「ええ子やね。
ほら、そこ座って?」


「…………」



千尋の言う通りに、椅子に座る。


出来るだけ身体を見られないように、タオルで前を隠すけど、そのタオルが濡れていてはあまり効果はないかもしれない。



-ビクンッ!


「……ふっ…」


千尋の手が、背中を滑っていく。


泡をたてた手の感触は、気持ちいいような、悪いような。



「綺麗な肌やなぁ。
傷つけんように、丁寧に洗わなあかんね」


結構です!


ササッと洗ってしまって下さい!


と、言いたいけど緊張していて声が出ない。



千尋の手が、首から背中、背中から腰へと順序よく下りていった。



何で、身体を洗うだけの行為に、あたしはこんなにも過剰に反応をしてしまうの?!