「まいったな……」


まいったは、あたしだ。


千尋は頭を撫でながらも、その場を離れる気配がない。


早くどっかいけ!

と、心で念じていたのに無情にも神様には通じなかった。



-ガチャ。


「何で入ってくんのよ!」

千尋が中へ入ってきた。


あたしは、身体を隠すためにお湯にギリギリまでつかる。


良かった、乳白色の入浴剤を使っていて。



じゃないと、丸見えじゃない。



「ご主人様の身体を洗うのも、メイドの仕事やから気にせんといて」


「気にするて!」


メイドの前に、あなたは男だろ!


あたしは、ついこの間初体験を済ませたばかり。

だから、当然の如く男性とお風呂に入った経験なんてないんだ。



「背中洗うだけやから、出てって?」


「いややっ!」


背中を洗うだけって簡単に言っているけど、背中を洗うとなれば身体見られるじゃない。


そんなの、絶対嫌!


千尋は、上半身裸になって逞しい身体を見せつけてくる。


その姿が、やけにいやらしくて、あたしは困ってしまう。