お風呂にゆったりつかったのは、最後はいつだったっけ?


社会人になってからは、なかったような気がする。


毎日同じように、仕事に行って疲れて帰って来て寝る。


そんな時間の中で、あたしに安らぐ時間なんてなかった。



「…フゥ。気持ちいいなぁ」


実家にいた頃のように、何でもやってもらえて、時間に余裕があると、こうもゆっくりできるのか。


これは、母さんに感謝しなきゃいけないな。



気持ち良さに鼻歌を歌いだしそうになった時、お風呂のドアがコンコンと音を鳴らした。


-バシャン!


音がするのは、誰かが訪ねてきたから。


その誰かは、間違いなく千尋だろう。


すりガラスにうつる影を見て、あたしは首までお湯につかった。



「な、なにっ?」


「開けてええ?」


は?


今、何ていいました?


ドアを開けていいかと、千尋は聞いたよね?


「そんなん、あかんに決まってるやん!

てか、何のようよ?」


「背中、流したいねんよ。あかんかな?」


「あかーんっ!」



そんなことまでサービスなのか。