美味しそうな肉じゃがの香りが、食欲をそそる。


「お腹すいたー!」


テーブルに、そりゃ豪華に並ぶ料理たち。


一切手抜き感のない料理たちに、あたしはランランと瞳を輝かせていたことだろう。



「ちょっと遅うなってもたからなぁ。

もう風呂にお湯もいれとるから、早く食べて風呂入ってゆっくりしてください」


エプロンを外し、向かい側に座った千尋。


本当に、完璧に家事をこなしていた。


部屋に帰って来たら、部屋中ピッカピカに掃除してあったし、洗濯もして綺麗に畳まれてあったし、仕事着やハンカチにはアイロンまでもかけてあった。


そして、食事を作っている間にお風呂まで……。



「ありがとう」


「お礼はいらんよ。
ご主人様のために、尽くすのは当たり前やろ!」


そうだね。


ご主人様なんだよね、あたし。



「欄さん、早く食べな冷めてまうで」


「やっぱり、慣れへんな」

「何が……?」


コテンと首を傾げる千尋にを見つめる。


「欄さんとか、ご主人様っての。
普通に、欄って呼んでよ」


あたしは、千尋って呼んでるんやし。