「あ、それ……」


「はい?」



玉ねぎを持った手を、背の高い男に掴まれた。


まさか、絡まれる?


ちょっと当たったくらいなのにっ?


ビクビクしたのは一瞬で、彼は欄に別の玉ねぎを渡してきた。



「それ傷んでるから、こっちのがええっすよ」


「―え。
あ、ありがとう!」



怒られるかと勘違いしていただけに、こうこられて安心した。


しかも、玉ねぎ傷んでたなんて知らなかった欄は、彼が教えてくれなければ先輩に傷んたものを食べさせるとこだったのだから

尚更、嬉しく思った。




「いいえ」


もう一度お礼を言ったら、彼は照れたような笑みを見せた。



――ドキン!


初めてまともに見た彼は、とても綺麗な顔立ちで

欄の心をざわつかせた。



な、なんで?

あたしには、先輩がおんのに!!



ブンブンと首を振り、欄は急いでレジに向かった。



さっきのドキンは、気のせいだ。


そう思うことにした。


でも、優しそうな人やったなぁ……。



彼も買い物をしていたとこを見ると、一人暮らしなのかもしれない。