当たり前のように、友達には彼氏がいた。


だけど、欄は高校三年になっても彼氏どころか

初恋すらまだだった。














「お母さん、あたし就職することに決めたから」


「そりゃ助かるな。
大学なんか行かす金あらへんからね」


「やけど、一人暮らししたいから頭金だけ頂戴」


「…………」




無理を承知で頼みこんだ結果、無事一人暮らしすることになった。



地元で就職しても良かった。


だけど、地元にいては運命の出会いなんてないんじゃないか。


小さな町には、見知った顔しかない。


だから、今まで恋した相手がいないのだから、これからだって期待は出来ないだろうと思ったのだ。



安易かもしれない。


けれど、欄だって年頃の女の子だ。


恋の一つや二つしてみたい。


都会に出れば、今よりも出会いはあるだろう。



それを期待して、誰も知らない都会へと欄は出て行った。