「あーっ!!
また、焦げたぁ!」


あれから、一年も経っていない今

千尋の側には、不器用な彼女がいた。



キッチンから、焦げた匂いがリビングまでやってくる。




「今度はなにしたんや?」

「唐揚げ……」


千尋は真っ黒に焦げた、多分これが唐揚げだろう物体を箸で摘む。


はぁ……、と息を吐いて欄を見下ろした。



「無理して作らんでも、言うてくれたら、俺が作ったるのに……」


欄のためなら、持ち帰ってきた作業を中断だってしてもいい。


そう千尋が言うと、何故か欄は頬を膨らませた。


軽く千尋を睨む。



「千尋に食べてほしいのに、千尋に作ってもらっても意味ないやんか」



「俺……に?」



そんなことを言われたのは初めてで

千尋自身、戸惑った。


いつも作ってやるのが当たり前だったから

作ってあげたいなんて。




「ふっ。
それでも、さすがに焦げたもんは食えんな」


嬉しさが込みあげてくる。

今すぐにでも、欄を抱き締めてやりたくなるのを、必死に我慢した。