「千尋、悩み事でもあんの?」


「……まぁ」



彼女の麻子は、千尋よりも年上で大学で経営学を学んでいた。


一人暮らしの麻子の部屋に、学ラン姿の千尋がいる。

黒のクッションを抱き、ゴロゴロとする千尋に

麻子は、苦笑いを見せた。



「千尋がそんなことしてたら、似合わんなぁ。

で、何を悩んでんの?」



似合わない。

大柄な男がクッションを抱いたら、確かに違和感はあった。


釈然としない思いを抱えたまま、クッションを横に起き出されたお菓子を摘む。


ポテトチップを出されたけど、千尋が好きなのはケーキやクッキーなど

甘い洋菓子が好きだった。


だけど、また似合わないと言われたら嫌なので、おとなしく出されたものを食べていた。




「進路……。
就職しようと思ってんねんけど、これといったんがなくてな」


「就職ねぇ」


麻子は、意味深に呟いた。