「あたし、泣き虫やで……」

「わかってる」

「我が儘やし……」

「慣れた」

「ヤキモチ…いっぱいやくし……」

「どんとこい」

「……あたし……」



グイッと、下から引かれて、身体が傾く。


千尋の腕の中に


また、戻ることができた。


「なんでもありや。

俺らは、まだ始まったばっかなんやから

これから、もっと知っていけばいい」


「……うん」



やっと

素直に慣れて

気持ちが楽になった。



千尋の胸に、頬を当て
千尋の存在を確かめる。


「……ごめんな」


髪を優しく撫でられて、スーッと全身の力が抜け落ちた。




「俺、仕事辞めるから」


「……ええよ。
今度は、信じるから」



次は大丈夫。


あたしは、今度こそ

千尋を信じると決めた。



信じることは、案外難しい。


裏切られた回数とか関係なく、一度――。


たった一度、信じてた人に裏切られると

もう、信じることが怖くなるんだ。