「まだ、欄にふさわしい男になれてへんかったんやな。

欄を不安にさせんようにて、内緒にしてたことが

かえって不安にさせて…」


皺になっちゃいけないかなって思ったけど

千尋のスーツの袖を握った。



ギュッと握ると、やっぱり皺がよった。


千尋の顔が見れず、あたしはずっと握った袖を見つめる。



「あー!!」


ビクン!

急に、千尋が大きな声をあけた。



「なっ、なに?」


驚いたってもんじゃない。

つか、今の今までしんみりした空気だったのに

急になに?




「つーか、言い訳ばっかして見苦しいな。

あー、あかん。

もう、あかんわ」


ガバッと、頭を抱えて蹲る千尋。


あたしは、戸惑いながら見下ろすことしかできない。


「もう、はっきり言うわ。
俺は、欄が好きやねん。

好きすぎて、わけわからんねん!!」


「……千尋」


「欄ほど、素直で純粋で臆病な女なんか見たことないや。

俺が、お前の側におりたい……て、思った」



頭を押さえたまま、上目使いで見上げてくる千尋。


キュンてなった。