今更、気が付いても遅いかもしれない。



あたしだけが

傷付いた気でいた。


千尋の上辺しか見ていなかったのかもしれない。


『俺の何を好きになった』

そう聞かれた時、答えられなかったのは

ホントの千尋を見ていないかもと思ったからかもしれない。



あたしは、千尋にされて嫌なことを

自らやってしまった。



何も言わず、別れの言葉もなく急に消えたりして。


あたしだって、千尋を傷つけたのかもしれない。



千尋がホントに、あたしを想っててくれたなら

あたしだって、千尋を裏切ったことになるかもしれない。



急に千尋の顔を見たくなって、背中に感じる視線を辿り振り向いた。


目深にかぶった帽子から微かに出た前髪が

ヒラヒラと風になびく。