「なぁ、欄はホンマに俺を好きやったか?」


千尋の横を通りすぎた時、背後に千尋の声がして

何を聞かれているのか、一瞬わからなかった。




「欄は、俺の何を好きやった。
見た目か、優しくしたからか……」



微かに震えた声。


今日の千尋には、ホント驚くことばかりだ。



優しい千尋が、キレたり。

キレてた千尋が、弱々しくなったり。



「あの男……。
欄は、何でも
あいつと俺を比べてたやんけ」


「千尋……」


「俺を信じてたって、俺の何を見て信じてたんやっ。
たった5日、それだけで、俺の何を信じることが出来んねんっ」


嘆くような放たれた言葉に、あたしは何も言えなかった。



千尋の横顔に、悲痛に歪む表情にくぎつけになって


胸が痛む。







「俺を見ろや。
あの男と比べんな。

それと、遠慮すんなやっ」

また、睨まれている。



だけど、不思議と怖くなかった。





「俺を好きなら、遠慮すんな。
女と会ってんの見て、一人で空回りすんなら、割り込んでこいや。

もっと、貪欲になれや」