そりゃあ、確かに楽だ。


一人暮らしの上、働いている人ならわかると思うけど、仕事もして家事もすると夜寝る頃には、本当にクタクタになってるんだよね。


洗濯(これは遠慮したい)や掃除、食事の支度から何から何まで千尋がやってくれるから、あたしは仕事が終われば家に帰って寝るまで自由かつのんびりできるのだ。



背の高い千尋が、片手にカゴを持ち食材を選んでいる姿は、何かミスマッチだ。


「今日は、何を作ってくれるん?」


「肉じゃかと、ほうれん草のお浸しときんぴらにでもしよかなぁーと。

あ、好き嫌いあるん?」


ジャガイモを一つ一つ手に取り品定している千尋は、あたしに聞いてくる。


あたしは、首を横に振った。



「ないで。なーんでも、食べる!」


「ふっ。えらいなぁ」


数個気に入ったジャガイモをカゴに入れて、千尋は空いた手で、あたしの頭を撫でてきた。


なんか、くすぐったい。


というか、好き嫌いがないだけでこんなふうに褒められたのは初めてだから、どう反応していいかわからない。


人参と牛肉、他に必要な食材や材料をカゴに入れてレジへと向かう。