恋の相手はメイド君!?

泣くのを我慢するために、小さな花と同じように空を仰いだ。



空は、曇ってた。



まるで、あたしだ――。






「千尋が女の人とおるんも見た……」



「……欄」



一定の距離をあけて、千尋がうつ向いている。


ダルそうに首を捻る姿が、グサリときた。



「――わかってるよ。

あたしは、客やってんよね」



攻めるつもりはない。


攻めたって、仕方ない。


わかってるのに……。



わかってるのに、次々に口から出てしまう言葉は。


何もかも、千尋を疑う言葉ばかりで。


千尋にウザがられてしまうとわかっているのに。



「なんで……。

なんで、言うてくれんかったの。

あたしの事、好きなんて……嘘つかんでも、あたしは千尋の客でおったよ」



止まらない。


だって、正直に言ってくれていたら、

あたしは、千尋の客としていることが出来た。



千尋に側にいてほしい気持ちは変わらないから、

ずっとは無理でも。



千尋を指名したのに……。


なのに、騙したりするから、一緒にいることが辛くなってしまった。