千尋と近所の空き地に移動した。


「どっか、二人になれる場所ない?」


だったら、小さい頃、よく遊んでた空き地にしよう。


何もない空き地だけど、あたしには小さい頃の思い出がある場所だった。



「秘密基地とか、作ったことある?」


「秘密基地?」



小さい頃は、自分だけの居場所がなくて。


隠れ家的なものに憧れた。


「此処にな、いらんダンボールとか持ってきて作ったことあんねんよ」


「……そうか」



興味ないよね……。


こんなところに来てまで何の話してるんだって、自分で自分がおかしくなる。




「――あるよ、俺も。
婆ちゃん家の近くにな、丁度ええ洞窟あって、そこに自分の好きなもん置いたりしてたわ」



懐かしむ声に、あたしは微かに笑えた。


良かった。


心から良かったと思える。


今千尋に会えば、ギスギスしたムードしかならないと思っていた。


だけど、それが嫌で。

だから、わざと子供の頃の話なんてしてみた。




千尋も話に乗ってくれたし。


これなら、ギスギスせずに話せるかもしれない。