実家を出たら、あたしの部屋は物置になっていた。

だから、寒くて埃臭い、元自分の部屋で手紙を書いた。



狭い家だから、この部屋くらいしか一人になれないんだよね。


やっぱり、思い出すと涙が出そうになるから、あんなに泣いて、もう涙は枯れたと思っていたのに、まだ千尋を想うと涙が流れたんだ。


あれから、たった1日か過ぎてなければ当然か。


デートをしたのは、その一週間ほど前で、千尋としたのはその前の夜。



何もかもが、まだ真新しい思い出で、直ぐに忘れるなんて不可能だったよ。



裏切られた夜、皐月と飲みに行き、その時の皐月は普段よりも優しかった。


あたしが、忘れることなんて出来るかな? と伝えたら、皐月は一息ついて言ってくれたんだ。




『無理に忘れることはないよ。
時間をかけて、思い出に変えたらいいねん』


嬉しかったなぁ。


無理に忘れる必要はないんだよって、あたしの気持ちが少し楽になったよ。



千尋への最後の想い。


ホントにこれを最後にしよう。


じゃないと、あたしはずっと引きずってしまう。