欄の家に帰って、いつものように夕飯の準備をしていたが、欄はその日帰ってくることはなかった。


朝になっても、昼になっても帰ってこなくて、気になった俺は、何度も欄に電話をかけてみたけど、ずっと流れるアナウンスは変わることはなかった。


機械的な女の淡々とした声。




――欄が、いなくなった。














「千尋も、とんだ客に捕まったもんやねぇ」


「どういう意味や?」


会社に戻り、欄のことを社長に報告した。


もう1日待とうと思ったが、そうもいかなかった。


いなくなった客の契約は即解約、それが俺だけに与えられた決まりだったから。


自分で言うのもあれだが、割りと人気があってスケジュールもいっぱいだ。


欄だけに構ってられない――。



「ホンマ千尋は厄介や。
あんたの仕事の腕は見込んでるけど、何でか千尋の客は過剰になるからなぁ。

管理する、あたしは大変や」


「うっさいわ。
誰が此処まで、会社でかくした思うてんねん」


「はいはい。
千尋様々ですよー」


その言い方はなんだ。