千尋と付き合ってからの、初デートは最悪に終わった。


無言のまま車に戻り、重い空気の中家に帰る。



帰ってからは、千尋は普通だった。


いつも通り家事をこなし、あたしの世話を妬いてくれた。



だけど、その場に今朝までの和やかなムードはなかった。



「デザートは欄の好きなアイスやからな!」


「風呂で背中流したろう!」


「髪乾かしたら、耳掃除したるな!」


「ほら、明日も早いんやから寝な?」






いつも通り。


本当にいつものようだった。



あれは喧嘩だよね。


二人の初めてのすれ違いだよね。


だけど、千尋の態度は大人だった。


ネチネチ引きずってるあたしが悪く思えて、さらに辛くなって。



寝たふりをしながら、千尋が寝室を出て行くのを黙って見送った。





「…千尋の…馬鹿」