「俺は納得できたわ。

この世にな、美しいだけのもんはない。
何処かに裏を持ってるから、美しさが際立つんやて」


「なんか、凄いなぁ。
あたしは、そんなふうに考えたこともないわ」



美しいから、裏が見えた時に恐ろしさを増すのか。


それとも、恐ろしいから美しい部分を探してしまうのか。



それって、まるで人間みたいだ。



綺麗な人ほど、裏がある。

良くも悪くも、見た目が良い人ほど、そうなんじゃないかなって。



あたしみたいに、綺麗とは掛け離れた奴だと、裏表作っても利益ないしね。


だけど、千尋みたいな綺麗な人だと表を良く見せれば利益は出そう。


そのかわりに、含みそうだよね、裏の顔が。




「……俺は、いっぱい見てきたかな。
綺麗で醜いもん……」


「……千尋」


「あれ、千尋さんじゃないの?」



え? 誰?


千尋の様子がおかしくなって、肩に触れようとした時、あたしたちに近づく人がいた。


フカフカの高級そうな毛皮を身に羽尾っている、ちょっとおばさんかな?


千尋の知り合い?