「……すごい」


峠道と雪ばかりで、ホントに良い場所なんてあるのかって思っていたけど。



これは凄い。



トンネルを抜けた後は、別世界だった。



「凄いやろ?
ここな、映画の撮影にも使われたほどの絶景スポットなんやて」



車を停めたのは、ちょっとした広場だ。


そこから暫く歩いた場所に、あたしたちはいた。



確かに絶景かもしれない。


背後は雪山、前は海。


木で出来た飛び下り防止の策の下を覗けば、かなーり下に崖に挑む荒波。


前を見れば、何処までも広がる青く白い海と降りだした雪。


綺麗だけど、怖い。



「ある人がな、美しさを持ってるもんは恐ろしさも必ず隠してるって言うてたねん」


肩をすくめて、千尋が懐かしんでいた。


口を開く度に、白い息が漏れていた。