「あれ、ちゃうの?」

「し、知らんわっ」


顔を覗き込まれて、真っ赤になっていそうな顔を見られたくなくて顔を背けてしまった。



そこで気がついた……。



何で、知らないなんて言ってんだよ。


知ってるじゃないか!

物凄く好きじゃないか!


好きって言うチャンスだったのに、聞かれてしまうと意地をはってしまった。


……なにやってんだ、あたしは。





-ポンポン。

軽く頭を撫でられた。


ん? と、顔を上げると相変わらず優しい笑みを浮かべたままの千尋がいた。




「そうやんな。
俺らは仕事の関係やし。
よし、しゃーないからお父さん役したろ!」



え? と、目が点になる。


仕事の関係?
それは、メイドだからって言いたいの?


よしよしと大きな手が、あたしの髪を撫でていく。


モヤモヤとする気持ちが、あたしの胸を渦巻いた。