「パァパ……」


「…は?」


しまった。


つい頭に考えていたままを口に出してしまった。


家族団欒なんて最近してなかったから、ちょっと家族らしいと思ったら…。


でも、千尋に対して『パパ』はないよね。



「あはは。 ごめんなぁ。なんか千尋見てたら、お父さん思い出してもた!」


「お父さん? ん?
にしても、俺そんなに親父臭いかぁ?」


ううんと首をふった。


千尋は全然親父臭くなんてない。


そうじゃなくて、こうして家のことをしている風景があたしのお父さんとかぶっただけだ。



「あたしのお父さんね、めっちゃ家族サービス好きな人やねん。
休みの日とか、千尋みたいにお母さんに代わって掃除したり料理したりしてな。
やから、ちょっと思いだしてもた……」


長い間、実家には帰ってない。


こっちに出て来てからは、がむしゃらに働いてたから。



「なんや、ホームシックになったか?」


ホームシック?

エプロンを外した千尋が、キッチンからあたしの側にやってくる。


「んなんちゃうもん…」


「意地はんなって。
無意識に言うてまうほど、お父さんこなんやなぁ」