入学式までの間、私はトモアキ先輩と一緒に勉強した。



入学してすぐ行われる、通称「お迎えテスト」があるから、うちの高校はそのテスト範囲を春休み中の宿題として出す。


私はその勉強、トモアキ先輩は、あと9か月後に迫った、センター試験のための勉強。


二人とも真剣に勉強していたから、私がわからないところを聞く以外、ずっと静かな空間。


それがまた落ち着く。


夕食までの時間、先輩の部屋で勉強して、一緒にご飯を食べて、あとはそれぞれお風呂に入って自分の部屋へ。


3月末から入学式前日まで、そんな日々が続いた。


私は、先輩と一緒に勉強できるだけで嬉しかった。


内気な私を、そっと優しく見守ってくれる先輩が大好きだった。


先輩はかっこよくて頭もいい、しかもお医者さんの息子。


……私なんて、絶対に相手にされる訳ない。


だから、これ以上好きになったら、自分が辛くなると思った。


たった2週間で、こんなに先輩の事が好きになった自分に驚いた。



ひとつ屋根の下で、大好きなひとと一緒に暮らせるのは、あと1年。


そう思ったら、嬉しいような、切ないような、複雑な気持ちだった。



それが変わったのが、入学式前日のことだった。