私は桂木君達を見ていられなくて、すぐに目を逸らして下を向いた。

桂木君と明日香は、友達として付き合い始めたはずなのに、もうあんな事…

キスをする仲になったんだ…
つまり、恋人の関係って事だよね?

後で明日香に『よかったね』って、言ってあげなくちゃ。


昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴ったので、私は顔を上げた。

「教室に戻りましょう?」

「紬ちゃん?」

「はい?」

「そんな顔じゃ戻れないでしょ?」

「え?」

片山君から言われて初めて、私は涙を流している事に気が付いた。

「あ、やだ。私ったら、何でだろう…」

眼鏡を外して目をゴシゴシ擦っても、涙が次から次へと溢れて止まらなかった。