「最悪じゃなーい? つかぶつかったの、そっちじゃね? みたいなー」
きゃははっと耳触りな笑い声に、ミキ達も合わせて笑う。
あたしはクスリとも笑えなかったけど、菊池さん達はまた自分たちのグループで会話を始めた。
それを確認したミキ達が一気に安堵の溜め息をつくと、丁度本鈴が鳴り響く。
「コエー」
サトミがボソリと呟いて席を立ち、ミキとユイも曖昧に笑みを浮かべてそれに続く。
……暗黙の了解とはちょっと違うけど、これがクラス内の力関係。
BランクがAランクに口応えすることは愚か、反論や楯突く事は許されない。
出しゃばってはいけない、自分より上がいるなら。
大抵の人の頭に、気付けばそんな事が根付いてるなんて恐ろしい話だ。
誰から学んだわけでもなく、学校という共同生活の中で自然と理解するはずなのに。
それが黒沢さんにはない。だから、ああなってしまうんだ。
イジメと言うよりちょっとした嫌がらせに思えるけど、きっと黒沢さんにとってはどっちでもいい事なんだと思う。
相容れないのなら、関わらない。1人の方がマシ。そんな感じが、雰囲気から見て取れる。
見惚れてしまう程美しい容姿と、凛とした強さ。
……あたしは多分、黒沢さんに憧れてる。



