「……先生」
「何でしょう」
「ムカつきます」
「え? 何で?」
だって、あんなに嫌いだと思ったのに。
もう関わりたくないと思ったのに、結局図書室じゃなくて音楽室に来ちゃったし。
本当の自分を出してしまうし、涙まで見られた。
「ハンカチ、洗って返します」
「あれ? 理由は教えてくれないんだ」
欲しかった言葉をくれたこの人を、あたしはもう嫌いだと言えない気がした。
「んー……あげるよ、それ。また使う機会あると思うし」
「え……いらない……」
「じゃあ、それ見る度、高城の泣き顔思い出すね」
ニヤッと口の端を上げた朝霧先生に思い切りハンカチを投げ付けた。
「馬鹿にしてるんですか!?」
「あははっ! やっぱ怒ると大声出すんだ…! あ、鼻赤いよ」
「黙ってください!!」
吹き出す朝霧先生に成す術はなく、あたしは手の甲で鼻を隠した。
やっぱりイラッとくる……!
嫌いじゃないけど、ムカつく!
――コンコンッ
突然のノックする音に振り向くと、開け放たれたドアからソロリと顔だけが現れる。
「……お邪魔だった?」
困ったように笑うのは、最高ランクの宮本くんだった。



