世界を敵にまわしても



「高城はやっぱり、嘘つくの下手だね」


眼鏡の奥に嵌め込まれた瞳は、真面目な外見とはかけ離れて艶やかに美しく、時に別人のように表情を変えるのに役立っている。


いつも思っていた。


コロコロと表情を変えてあたしを怒らせたり呆れさせたりするのに。


ふとした瞬間に綺麗だと思わせる表情は、いつも同じだった。


『朝霧先生』では無い全くの別人に見えるのに、息をするのも忘れるくらい綺麗で、物悲しそうな顔。



「頑張ったね」


スッと伸びてきた手の意味を、あたしは分かってて避ける。


「あれ?」

「子供扱いしないでください」


きっと、頭を撫でてくれようとしたんだろうけど。それを受け入れられるほど、あたしは素直じゃない。


「何で?」


イラッとしたのにすぐ消えたのは、朝霧先生が微笑んでいたからだった。


「頑張ったんでしょ? 1位、おめでとう」

「……やめてください」


ハンカチで覆っていた口から発した言葉はくぐもっていたのか、朝霧先生には届かない。


「高城」


……やめてほしい。


そんな、自分のことのように嬉しそうな顔をして言うのは。



「よく頑張ったね」


顔を逸らしてすぐ届いた言葉にギュッと目をつむったけれど、もう遅い。



昨晩から我慢していた涙を止める術を、あたしは知らなかった。