「俺と美月は、教師と生徒で、楽しいことばかりじゃないと思う。何があるか分からないしね」
「……例えば?」
「んー……もうご免だけど、また噂が立つとか」
それはもう本当に嫌だ!
顔に出たのか、先生は喉の奥で笑って意地悪いことを付け足す。
「お互いにライバル出現とか?」
「それ、噂よりヤダ……」
「はは! まぁ、でも、色々問題が出て来るかもしれないでしょ? また不安になって、怖くなって、逃げ出すかもしれない」
先生は握っていたあたしの手に視線を落としながらそう言った。
「だけどそれが追い付く前に、心がのまれる前に、美月を想うよ」
伏せていた長い睫毛が上を向いて、先生は目尻に微笑みを帯びさせる。
「美月となら、何でも乗り越えられる。1人じゃ無理でも、2人なら。……これが最後の恋だって、言える」
「……あたしもだよ」
これが最後の恋だと言える。2人だから、誓える。
何回でも、この心に刻もう。
先生への想いが消えないように。
1枚の楽譜から始まった先生との物語を、いつまでも、永遠に続けたい。
「美月」
先生はギュッと強くあたしの両手を握って、綺麗な二重を優しく細めた。



