世界を敵にまわしても



「ねぇ先生」

「何でしょう」


この受け答えも久しぶりに感じる。あたしはわずかに速まる鼓動に気付かないフリをしながら、先生に質問をした。


「英語出来る?」

「俺? まぁ、挨拶程度なら出来るよ」

「日常会話は?」

「あんまり。外国行ってた時はほぼジェスチャーか、通訳の人に頼ってたから」


そう聞いて、あたしは少しホッとした。それに気付いたのか、先生は「何で?」と首を傾げる。


……いや、先生が英語を話せていても全然いいんだけど。


あたしが、その手伝いを出来たらなって。


「通訳出来る人になろうかなって」

「……ほんと?」


疑うような言葉に、信じられないと言いたげな表情。だけど、先生の声色はとても泣きそうで、本当に嬉しそうなものだった。


「あたし英語は出来るし、今フランス語の勉強してる」

「それって……俺と関係してる?」


分かってるくせに、何でそうやって聞きたがるんだろう。


「多分、そうじゃない?」


それであたしは、相変わらず素直じゃない。


だけど先生が人懐こい笑顔見せるから胸の奥がギュッと締め付けられて、頬が熱くなる。


「すごい嬉しい。頑張って……応援してる」

「……先生もね」



あたしが通訳になる頃、先生は世界中を飛び回るピアニストになって。


そしたらあたしは先生に、どこまでもついて行くから。