「そういえばこの前言うの忘れてたんだけど、零がゴメンねって」
「……零さん?」
「うん、零の家出る時に、謝っといてって言われたから」
……何がゴメン?色々ありすぎて正直分からない。
「零と会ったんでしょ? その時に色々毒づいたって楽しそうにしてたよ」
「楽しそうって……」
晴に頼んで、椿さんとホテルで会った時のことだと思う。毒づかれたというより、嘘を吐かれたと言った方がいいけど。
そっか。あれも、零さんは先生に協力してただけなんだろうな。
あ……だから笑ってたのか。
先生はまた、ピアノを弾くようになるってあたしが言った時、零さんは目を見開いてすぐに笑った。
『そう……それが、美月ちゃんの望むソウなのね』
まさに先生がピアノを猛練習中だったから、可笑しかったのかな。そうだとしても、その後散々ビビらされたんだけどね……。
「そう言えば零さんが、先生は専業主夫になるって言ってたよ。楽しげに」
そう教えてあげると、先生のこめかみがピクッと動いた気がした。
「そう……大丈夫、いつかコンクールに出て零に勝つから」
「頼もしいね」
そうやって、普通に夢を口に出来るようになって良かった。
きっと先生なら、出来ると思う。
零さんと張り合うくらい、再び勝つことが出来るくらい。



