「マンションで黒沢の言葉に焦ったし、学校で宮本の行動に嫉妬したんだもん」


何だ、もんって。


……でも、その方が先生らしい。


我慢出来なくて来ちゃうところとか、変わってないんだなって思うと嬉しいのも事実だ。


「それにあの時、待ってるって言われて嬉しくて、すっごい練習したんだよ、俺」

「……」


今度、偽った姿であたしの前に現れたら嫌いになるからって言って数日でこれだもんな……。


もう何も言い返せないっていうか、負けたっていうか、騙されたっていうか。


「ハル坊ーっ! ちょっと手伝って!」


店の裏に居たオーナーさんが顔を出し、晴を呼んだ。


晴は「ちょっと行ってくる」と席を立って、あたしと先生は広いホールに取り残される。


「……あたし、オーナーさんのことスタッフだと思ってた」

「あぁ、若く見えるもんね。でも30代前半だよ?」


注文を取りに来てくれて、サービスのケーキを持ってきてくれた男の人は実はオーナーさんで、先生の知り合い。


『まぁハル坊じゃなー……無理ってか、無理?』


あれは、晴じゃ先生には敵わないという意味だったらしい。


……やっぱり何か、騙されたみたいで悔しい。


いや、みんな先生を応援してくれたんだろうけど……ステージに先生が出てきた時は心臓が止まるかと思った。