「ははっ! ウサギの目みたい」


隣に腰掛ける先生の腕をバシッ!と強く叩いて、あたしはアイスノンで瞼を冷やした。


これを持ってきてくれたのは晴で、もちろんまだこの場にいる。


閉店したショットバーには、あたしと先生と晴、それからオーナーさん。晴の両親は帰ってしまったらしい。


「いやー……あんな大勢の前で抱き締められるとは思わなかったな」

「~っ先生だって抱き締めたじゃん!」

「はいはい、喧嘩すんなよなーっ!」


目の前に座っていた晴が止めに入ってきて、あたしはグッと口をつぐむ。


実は晴の今日の本当の目的は、デートでもなければ晴の両親に会うことでもなくて、先生のピアノを見せるということだった。


先生があたしの自宅前にいた日、晴の携帯に先生が電話を掛けたらしいけど。


「……え、ちょ! 何で俺が睨まれてんの!?」

「また騙されたと思って」

「俺ぇ!? てか、この場合奏ちゃんでしょ! 悪いの!」

「宮本には感謝しないとな」


先生がそれを言うの?


「……ていうか、先生も逢っちゃダメとか言いながら逢いに来てるし」


ボソッと呟くと、先生は苦笑して言い訳をする。