世界を敵にまわしても



あたしの気分とは裏腹に、空は晴れて、太陽の光が溢れかえっていた。


「晴」


帰りのホームルームが終わり、あたしはすぐに晴の背中に声を掛ける。携帯を見ていた晴の振り向く動作が、やけにゆっくりとして見えた。


「美月。……どした?」


いつもなら、くしゃっとした笑顔を見せるのに、今日の晴は穏やかに微笑んでみせる。


「……ちょっと、時間ある? 話したいことがあるんだ」

「それって俺にとって、いいこと? 悪いこと?」

「……」


パチンと携帯を閉じて、体をあたしのほうへ向ける晴の笑顔は、穏やかなんかじゃなかった。

悲しいのに、笑ってる。そんな、力のない笑み。


「……冗談。わかってる、ごめん。俺、この前からダメダメだな」

「……そんなことないよ」


こんな時だからこそ、上手い言葉を言えたらいいのに。ダイレクトに伝わる生身の人間の感情に、あたしの現代文の成績なんて、何の意味も持たない。


「場所変えるよな? どこにしよっか。外廊下とかで平気?」

言いながら席を立った晴は、閉じた携帯を再び開いた。


「うん……外廊下で平気だけど、ゴメン、今忙しい?」

「あ、携帯? んーん。ちょっとメールしてたんだけど、もう送ったし、大丈夫。行こっ!」


今度こそ無邪気な笑顔を向けてくれた晴に促されて、あたしは晴の後ろについていった。


どうしようもなく、胸を苦しくさせながら。