「……先生?」
あたしは足を止めて、目の前の現実を受け入れようと必死だ。
――先生が、あたしの家の塀に寄り掛かっていた。
電灯や家の光が漏れる住宅街は薄暗く、一瞬見ただけでは分からないだろうけど。
あたしの家から漏れる光が、先生の髪を金色に見せたからすぐに分かった。
歩みを進めながら、あたしはチラリと自分の家の窓全てを見る。雨戸もカーテンもきっちりと閉められていた。
先生の前で止まると、ゆっくりと絡む視線。
まさか、家の前にいるなんて。今さっきまで、逢いに行こうとしてたのに。先生から来るなんて誰が想像出来ただろう。
「……先生、昼間は黒髪だったのに」
そんなどうでもいい話からしたのは、少しでも速まる鼓動を落ち着かせたかったから。
すると先生は自分の前髪を下に引っ張って、少し口の端を上げた。
「ウィッグ被ってたんだ」
「……カラープレーかと思った」
「最初はそうしようと思ったけど、さすがにこの色じゃね」
隠しきれなかった。そう言った先生にチクリと胸が痛む。
金髪の先生が、本来の姿なんだと言われてるようで。
昼間の先生は嘘の姿なんだと言われた気がした。
じゃあ、今あたしの目の前にいる先生は、嘘を吐かない?



