「俺ならそんな顔させないのに……」
「!」
グッと近付いてきた晴の顔に、あたしは慌てて俯く。だけど頬を晴に包まれていたから、うまくいかない。
「待って晴……ッヤダ!」
握られていた手を離そうとしたのか、引き寄せたのか。
晴の胸元を押したのか、掴んだのか。
とにかく顔を背けることに必死で、その間晴がどんな表情をしてたのか分からないまま。
どうしてお互い足がもつれたのか理解する暇もなく、あたしと晴は地面に倒れ込んだ。
「ご、ごめん晴……!」
起き上って晴に伸ばし掛けた手を、すぐに引っ込める。
晴も上半身を起こして、俯きながら手についた汚れをはたき落したから。
……どうしよう。
いや、どうするも何も、今何が起こったのかすらよく分かってないのに……。
「……ゴメン」
謝ったのは、晴だった。その意味だけはちゃんと分かっていて、うつむく晴の表情が分からなくて、申し訳なくなる。
「ゴメン……最悪だ。ガキだな、俺」
そう苦笑しながら顔を上げた晴に、あたしは強く首を左右に振った。



