世界を敵にまわしても



「は……晴?」


校舎裏の雑木林はとても静かで、立ち止まった晴にあたしも足を止めた。


裏庭なんて初めて来たと思っていると、晴が握っていた手を引き寄せる。


その力の強さに足がふらつき、危うく晴の胸に頭をぶつけそうになった。


すぐに晴を見上げたけれど、あたしは驚いて目を見張る。距離の近さでも、頬に触れられたことでもなく、晴の表情に驚いた。


「また泣きそうな顔してんじゃん……」


……それは、晴でしょう?


スルッとあたしの頬を晴の親指が撫でて、奥底から段々と鼓動が大きく響いてくる。


「晴、あの……」


突然脳裏をよぎった、晴があたしを好きという事実。


それが一気に現実味を帯びて、この状況に戸惑った。


握られた手が、頬に添えられた手が、近すぎる距離が、あたしの体温を急速に上げる。


「なぁ、もう……やめよーよ」

「……」

「そんな顔するくらいなら、奏ちゃんを好きなのやめて」


あぁ、そっか……晴は、さっき先生の前で泣きそうになったあたしに気付いたのかな。


晴から見えたのは、後ろ姿だったはずなのに。あたしの背中はそんなに、寂しげだったのかな。